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日野川 あさ

Author:日野川 あさ
奈良のエネルギーワーカーです。
主にネットでヒーリングやチャネリングの活動してます。

○伝授・ヒーリング等のサイト
”PRISMATICA”

○天然石とアクセサリーのショップ
プリズマティカのサイトに併合しました。

○アメブロの普段日記
”スジャータさんのメモ帳”

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前世の考察 6

<弱み>
幕があがると、待ちかねたようなヤジが飛んだ。
不満をしめす口笛の嵐、怒号、歌手や楽士たちへ罵詈雑言が乱れ飛んだ。
汚物まで飛び交うようになり、事態は最悪であった。
歌手たちも負けていない。口汚く観客をののしるという酷い皮切り日となった。

ニナッハは後方から投げつけられた汚物や怒号にまみれて恍惚として座っていた。
観客、役者、歌劇場にいる人間達の興奮のるつぼになっていたが、このオペラがすばらしいものだったことには間違いがなかった。
周りの興奮と、体で感じた恍惚感はニナッハに感動というスポットライトを浴びせていた。

ニナッハは庭の仕事をしていたサルディーニとよく無駄話をしていた。
彼はあの森の手入れをする人で良くあの場で顔をあわせていた。
彼は酒を与えていればいつもご機嫌だった。大きなはらをゆすって気持よく大きな声で笑う。そんな男だ。
ニナッハがある日いつも通りあの森の井戸のところで歌の練習をしていると、背後に気配をかんじ振り返るとサルディーニがおそろしいほど近くに立っていた。
ひどくおどろいて短く悲鳴をあげてから後ずさりした。
なにかにつまづき倒れそうになったニナッハの手を彼はとり、助け起こしながら言った。

「ニナッハ、実は相談があるのだが・・・」

サルディーニは自分の父が無実の罪で牢獄にはいってること。
そしてやっとそこから釈放されたが当座の暮らしができないほど逼迫しており、食べるにも困る状態であることを説明した。

父親を養うため、自分はここの銀食器を拝借しようとおもってる、なに旦那様のことだ、たくさんある銀食器の一つや二つ消えてもお怒りになるようなことはない。それに女中頭も言っていたが困ったことがあったらこの銀食器の一つ二つもっていっていいと旦那さまが誰かに言っているのを聞いたといっていた。と。

ニナッハはルクレツィアがぴかぴか光る銀の食器で肉を切っているところを思い浮かべた。ルクレツィアだけではなく彼女の弟、公爵、奥様もみんな食事でふんだんに銀食器を使っているところが目に浮かんだ。

でも彼がなぜそれを自分にいうのかわからなかったので、目をあげて怪訝そうに彼の顔を見た。
そのニナッハの心の動きをみたサルディーニは続ける。

俺は庭師で屋敷のなかに入れない。そこで一つ銀食器を拝借してきてくれないかー・・・。

ニナッハは善悪の区別が曖昧なところがあった。
少しくらい悪いことをしても悪いと思わない。むしろしてやったりと思った。
子どもの頃の粗野な環境がその程度の意識しか彼女にもたせなかった。
サルディーニとはさほど仲良くもなかったが、彼に頼まれ、そしてゲームのような感覚で盗んでやろうという好奇心がむくむく彼女の胸をふくらませてきた。
ニナッハはなぜか大笑いしながらわかったと気前よくサルディーニに約束した。

そしてその日の昼食時、盗みを決行した。
彼女がスカートの中にかくしたサルヴァを首尾よく手に入れ、あの井戸のところで上機嫌でへたくそな鼻歌を歌いながらエプロンで磨いていた。
大成功だった。
盗んだときの軽い興奮を思い出すと笑みがもれる・・・。
そして肩をたたかれた。
サルディーニかと思い振り向くと、なんとそこにピーボが立っていた。

彼は屋敷にきたときは、用事がおわると、その秘密の場所から少しはなれた木のところでいつも彼女の様子を観察していた。
いつも通り見に行ったが彼女があきらかに屋敷の銀食器を手にしているのをみて不審におもったのだ。

ニナッハは飛び上がるほど驚いて、銀食器を背の後ろに隠し後ずさりし逃げようとした。だがピーボはそれをとらえ彼女に顔をよせて聞いてきた。

「それは公爵の物ではないのか」

ニナッハはとっさに、父が実は無実の罪に・・・というサルディーニの・・・これも実は真っ赤な嘘で、ただサルディーニは飲み代欲しさにニナッハに盗みを働かせただけでニナッハはだまされていたのであるが、そのサルディーニから受けた説明をし、どうしても銀食器を盗まないといけなかったということを言った。
彼女はそれが自分の父であるという嘘をついた。

「父親のためにやむをえなく盗みを働いたというのか」

ピーボはニナッハの腕をつかんだまま、少し考えた。
狡猾なこの男はニナッハの弱みを二重にも三重にも利用しようと頭をフル回転させていた。
一通り考えがまとまったところでピーボは黄色の歯をむき出しにしてにやっと恐ろしい笑顔を浮かべニナッハにこの件は黙っておくからと言った。
ニナッハは銀食器を取り上げられ、ピーボは唇に人差し指をたてたままニナッハの口を片方の手でふさいだ。
ニナッハは気持ちが悪いとおもっていたピーボに手込めにされ、泣いた。

ことが終わり、ピーボは父を思う殊勝な気持ちに免じて見なかったことにするといって立ち去った。
盗みがピーボのような男にばれた。井戸端には涙で顔がぐちゃぐちゃになったニナッハだけがとり残された。


ニナッハは思う。
(私が失敗したから悪いのだ)
(私が女だからこんなめにあったのだ)
(私が悪いのだ)


どこからかあの序曲が聞こえてくる。ルクレツィアがふざけてチェンバロを弾いているのだろう。遠くて小さい音でしかもつっかえたり間違えたりの音。。。。
それが途切れなくニナッハの耳に入ってきた。

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