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日野川 あさ

Author:日野川 あさ
奈良のエネルギーワーカーです。
主にネットでヒーリングやチャネリングの活動してます。

○伝授・ヒーリング等のサイト
”PRISMATICA”

○天然石とアクセサリーのショップ
プリズマティカのサイトに併合しました。

○アメブロの普段日記
”スジャータさんのメモ帳”

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前世の考察 10

私の前世について、長々と物語っぽく書き付けてきた。
あの後は、元々「異種」と感じていた夫とは、離れ、その後もふらふらとするが3のように一生を終える。多分40才前後くらいで終えたように思う。

今の人生とのつながりはかなりあり、自分のもっている課題にヒントを得られるような目新しいことはなにもなかったが、課題の再確認はできたようにおもう。
他の人の過去生をみさせていただくのにもかなり有効なトレーニングになったと思う。

森林の香りや水、一人でいるときの幸福に満ちた安心感などは、多分今の私の生活の中でかなり必要なことなのだろう。

ということで、前からかなり思っていたのだけれどヒプノセラピーを勉強したいという衝動に駆られ中。ヒプノの講座を受けたいとおもいながら、これ!と思える先生がいなくて、希望しつつもそのままだった。

とおもってたら、タイミングが出てきてしまった。
先日先生よりその名前をきいたドロレスキャノンさん。
ネットでしらべたり、彼女の本をみたり関連ブログを拝見しているうちに、彼女のクラスがうけたくて仕方がなくなってしまった。

臨床経験30年以上のキャリアを持たれる方で、彼女のセッションにはサブコンシャスという存在が現れ色々話をしてくれるそうだ。日本ではまだ認知度が低くて、日本でもセミナーは開催されたことがない。
幸運なことに彼女のクラスを受けた人は日本にいて、しかもかなり近所にお住まいだった。その方に4月にセッションを受けさせていただく予定。

楽しみだけど、余分なものをそぎ落として落ち着くという年初の目標は・・・・・・・。
これは、余分なものじゃないってことだな。うんそうだ。(^_^;;


前世の考察 9

<邂逅>

ニナッハはピーボと一緒に『どろぼうかささぎ』というオペラを見に行った。そのとき結婚を申し込まれた。ピーボはオペラについてはプロなので、それを餌に巧みにニナッハを口説いた。

彼はそのオペラの主人公が彼女の名前からとったものであることを説明した。(残念なことに恋人役といっていたのにもかかわらず、彼の名前は子ども役になってしまっていたが)。単純でオペラ好きの若い娘がよろこびそうなロマンチックな演出だ。
ニナッハは驚きと感動をもって、舞台とピーボを見比べた。
「君が父親を思う気持ちに感動してね」とピーボは照れを装いながらニナッハをちら見して様子を伺った。

頬を紅潮させながらピーボに向ける視線は、いつもの彼を見る時の戸惑いや不安げな様子が幾分減っており、感謝と情が若干ではあるが込められていた。

それを見逃さなかった彼は続ける。
「ニナッハ、今、小さな劇場ではあるが、『セビリアの理髪師』のオープニングでてもらう端役も女性を探しているんだ。」
「少し台詞があって、一瞬だけど目立つところもある。どうかね、それに君、出てみないか」

ニナッハは上演中にも関わらず ええっ!と大げさに大きな声を出して立ち上がった。小刻みに震えながら息を飲み込み、ピーボを見つめた。
そしてドレスの左右を指でつまみ、少しかがんで丁重におじぎした。
「はい・・・・ よろこんで!」

お礼に結婚しなければならないと思った。
ピーボはここまで自分にやってくれている。私の歌の能力ももちろん認めてもらってだろうけど、ここまでやってくれている人の望みはお礼としてかなえななければならない。
震えたり感動したふりをすれば喜ぶだろう。
私の名前を主人公につけてもらったことを喜べば彼も喜ぶ。
結婚などだれとしても同じこと。子を作ればピーボは満足するだろう。

彼女の首から右肩にかけての大きな黒い影は満足げに大きく息を吸い込んだように独特の動きをした。

こうして、ニナッハは気味が悪いと思っていた男と結婚することにした。

そのころ『セビリアの理髪師』はもう様々なところで上演されており、リバイバルで小さな劇場でもときどき公演されていた。
ニナッハがやるのは女性は街娘で、「ありがとうございます!ご主人様!!」と一言叫ぶ。そのときに一瞬スポットライトのすべてを独占できる。そんな役だった。
歌唱力は関係なく大きな声がだせればいいだけである。

同じ舞台にいる売れっ子の歌手たちと同じ場にいるので、自分もいっぱしの歌手のような気持ちになった。
舞台は1日に数回あったので忙しかったがその合間にも、誘われるがままに男性の歌手のデートをしたり相手をしたりした。
そんな行動は夫ピーボにたいして不誠実であったが、理解していなかった。自分を他の舞台でも売り込めるチャンスでコネ作りのためと思っていた。
ピーボにばれていないのをいいことに奔放な行動を楽しんでいた。

魔術師によって仕込まれた黒い影は彼女の闇の部分をうまく引き出していった。
正しいことや純粋であることは重要ではない。嘘であっても、不誠実であっても大したことではない。

泥酔して家に帰ることが多くなってきた。
いそがしいピーボは仕事で通常は帰宅も遅い。そんなだれもいない家に千鳥足で帰ってきた。ただいま~といいながら扉をあけると、ふわっとあたたかい空気を感じた。だれかいるようだ。
火の気のない暖炉の前に老人が、すわっていたのだ。
そこは、火もついていないのに、やわらかであたたかい気が立ちこめている。
老人はやせていて、真っ白いひげと髪と肌であった。白すぎるので、青みがかったプラチナの光のようにも感じる。暗い室内で輝いている老人は振り返った。

その瞬間酔っぱらっていたニナッハは仰向けに倒れた。
ダークブラウンの板の床で、そばに古びた机があり白い花がさしてある花瓶がうえにある。
天井も暗い。暗い天井をつきとおして星が見える。
星は転倒のショックでみえたものであろう。
他に光っているのは自分の体とその老人。

飲み過ぎた・・・。
酒臭い息をフーーッと長くついた後、ニナッハは動けなくなってしまった。
まばたきもできず顔の筋肉が動かない。体もまるで石膏でかためられたように動けない。

大の字になって目を見開いたまま横たわっているニナッハ。
自分が固い床に寝転がっている感覚はなく、意識が天空にあがる感じがした。
周りの星がまたたきをはじめ、中心の光るものが一つが大きく輝きを増し始める。
まるで太陽のように大きく大きくかがやいて、眉間にその光が貫通するように感じる。

しばらく直視できないでいたが、徐々に光の中に老人がいるのがわかった。
すべてが金色に輝く場所で、彼は温かくやさしい笑顔でニナッハを見つめていた。
あまりに光がものすごくて息がしにくいほどだ・・・とおもっていると、

「わかりますね?」と老人が言った。

わからない・・・・。
返答に困っていると笑顔のまま老人は消え、光も消えそのままニナッハは星空の光に満ちた空間を浮遊しはじめた。
漆黒の空間であったり、雲のようなやさしい空間であったり、赤や黄色、青などのさまざまな光の丸い玉が浮かんでいる場であったり色々な場を漂う。
初めての経験。夢をみているのだろうか。気持ちがとてもいい・・・。

そのとき。
バタン! と大きな音がした。
ニナッハはピーボが帰宅したことをしり、意識が急いで体に戻ってきた。
すぐには起き上がれず、目だけ暖炉のほうにやったが、老人はいない。部屋の別のところを見渡してもいつも通り寒々しい部屋である。

ドアをあけてピーボが入ってきた。

前世の考察 8

<屋根裏部屋>

青年はニナッハのせいなどとは思っていなかった。
いきなり悪漢に教われたくらいしかおもっていなかったが、彼女は自分の責任を感じその後彼とは疎遠になる。

食堂でニナッハと同じような暮らしをしている若い娘がいた。
マルタという。黒い髪の綺麗な娘だ。
その日暮らしで、楽しければよいという生活。ただニナッハとちがっていたのはローマ出身で都会っこだった。身につけるものもセンスよくお化粧もきれいだった。

食堂にやってきた男達に言い寄られていたがそれをきつい言葉で撃退するのが半ば彼女の趣味になっていた。
若い男を次々酷い目にあわせているのがニナッハには不思議だった。
(あんないい人に言い寄られたら私なら即ついていくのに・・・)
と、思いつつもマルタの一種こびないところにあこがれもした。

中にフィリッポという学生がいた。
彼は田舎の名士の息子で、ローマに留学に来ていた。
勉強しているはずがいつのまにかマルタの虜になり毎日正午になるとやってきた。

実はマルタの思い人はフィリッポだった。
好きなのに素直に表現できず、マルタは彼が来るときまってニナッハに、あの馬鹿な苦学生を追い返す手段はないかと笑いながら言ったりしていた。
粗野なニナッハにその繊細な感覚がわかるはずもない。

頭も良くスマートでハンサムなフィリッポにはどんな女性も夢中になる。
ニナッハも彼がくるたびに、愛想良く不必要に話しかけていた。
フィリッポはニナッハをマルタの友達と思っていたので評判をさげたくなく丁寧に接していた。

そんなニナッハをマルタが良く思うはずがなかった。なんとかしてこらしめてやろうと思い立った。

屋根裏部屋がその場に選ばれた。マルタは魔術師の男にニナッハに悪霊をとりつかせるよう依頼した。
ニナッハにはとても良く当たる占い師さんがいるので見てもらわないか、今なら無料だといって誘った。単純なニナッハは大喜びで必ず行くといって約束した。

屋根裏部屋は風呂屋の4階にある。
ほとんどつかわなくなっており、そこへあがる階段も管理されていない。
ほこりがたっぷり乗っていて足をすすめるたびに舞い上がる。
部屋の扉はなぜか真っ赤で不自然だった。

扉をあけると、そこは・・・なんとなくもやのかかった部屋だった。
すみにほこりだらけの赤紫のサテンのベッドカバーがかかったベッドがあり、また別の隅には椅子やタンスや燭台が雑多な置き方をされ積み上げられて片付けられていた。天井には梁がみられこの建物の最上階であることがわかる。窓は一つだけでそこからほこりっぽい陽が差し込んでいた。
その陽を背中にうけ、やせた人物が一人、中心におかれた椅子にすわっていた。

ドアをしめてニナッハは緊張した。その人物が手招きするので近寄ってみる。
ぎしっ ぎしっ と床の板が足をすすませるたびにきしむ。
逆光で最初わからなかった顔の作りや姿がわかってきた。
それは猛禽類のような顔だった。鷲鼻で、ほとんど色素のない青い目は驚くほど大きく見開かれており光がなかった。肌は気持ちの悪いほど白く、白髪で一縷の乱れもなく後ろでたばねられている。
真っ黒の服でマントのようなものを羽織っている。

人間に見えなかった。その雰囲気だけで気持ち悪さを感じて逃げ出したくなったが足がすくんで動けない。髪が逆立ち、肌がぴりぴりする。恐怖心でいっぱいになった。

男は立ち上がって窓に緞帳をかけた。そしてろうそくに灯をともし香を焚いた。
そして見たことのない不思議な身振りをした。

・・・・・

ニナッハはそこで神と出会う。
威厳にみちた神の姿が目の前に現れたのだ。
そして色々映像をもって教えてくれた。

ピーボがでてきてもう一度乱暴をする、そしてひどく殴られた。
ーこれはあなたがだらしないからです。意思を持たないからです。

屋敷を追い出されたところがでてきた。
ルクレツィアが寂しそうな顔で見送っている。
ーあなたは彼女の信頼を裏切りました。

折られたクラリネットが湖面に浮かぶところがでてきた。
ー彼はあなたを深く恨んでいるでしょう。あなたの責任です。

あなたは責任がとれません。
情をかけてくれた人を裏切る人です。
そして身持ちが悪い意思がない人です。
あなたはいいところが見当たりません。
自分をそのような人間と認めるべきです。
愛されるところがないので愛されるところを作るよう努力しなさい。

ニナッハの心は小さくしぼんでいった。なにも知らなかったハートに不安と恐怖という感覚がしみ込んできた。

マルタの顔がでてくる。眉を吊り上げて怒っているところだ。
私は彼女になにか悪いことをしでかしてしまったのかもしれない。

ピーボの顔も浮かぶ。
あんなめにあわせるということは彼になにか悪いことをしてしまったからなのかも、続いて公爵、サバティーニ、故郷の父の顔まで浮かんできた。彼等はみんな怒りに満ちた顔をしていた。
なんてことをしてくれたんだ。
汚らわしい人間だ。唾棄すべき人間。生きていていいのか。

ニナッハの背中から肩の上にかけて大きな黒い影が乗っていた。
彼女のオーラ体はその影に浸食されていく。
ハートにも同時に黒い不安の影がそまりはじめてくる。

彼女は立っていられなくなりその場でばたりと仰向きに倒れた。
鷲鼻の男は静かに立ち上がって見下ろしていた。



前世の考察 7

<嫉妬>

このオペラの初日が散々だったのは、実はロッシーニの人気を妬んだ様々なオペラの関係者によるものだった。彼等の差し金がわざとやじを飛ばしたししてこのオペラの初日を台無しにしたのである。
その証拠に2日目以降は大盛況だった。ローマ中がこのオペラの話題で持ち切りであり、アルジェンティーノ劇場は大繁盛だった。

ニナッハは歌劇場に通い続けた。
仕事もほったらかしで日参した。夢中になったら他がなにも見えなくなるのである。
細かい台詞や歌い回しもそらで案じられるほどにになった。
そしてあまりに酷い仕事ぶりに飽きれたチェザリーノ夫人はニナッハをクビにした。

同じ頃サルディーニも解雇された。
銀食器サルヴァを盗んだのはサルディーニの仕業とされたのだ。
ニナッハはなにも言ってなかったし彼がクビになったこともしらなかった。すべてピーボの巧妙な罠だった。
ニナッハと仲良く話しているのは犬猫ですら気に入らなかったピーボは森でたびたび2人が談笑する様子がたまらなく嫌だったのだ。
全てビーボが仕組んだことで偶然サルディーニは犯人にされた。因果応報で本来は反省すべきだったがサルディーニはニナッハが告げ口したにちがいないと思い込み彼女をうらんだ。

屋敷を追われたニナッハはあの楽士のクラリネットの青年とたびたびデートしていた。
ニナッハの暮らしは荒んでいた。食堂の皿洗いや風呂屋の洗濯係や日雇いで仕事をした。それもオペラを見に行くための小遣い稼ぎである。
そんな暮らしだったがニナッハは自由を楽しんでいた。

ある日2人はアルバーノ湖に出かけた。
貴族の別荘が建ち並ぶなか木立の中の遊歩道を2人は歩いた。
木陰をみつけ湖畔の段差があるところに腰掛ける2人。
その日、彼はクラリネットを持ってきていて、例のニナッハが大好きな序曲の主音律を奏ではじめた。

ニナッハは目を閉じてうっとりとほおづえをついて大げさな身振りで聴き入っていた。時折「永遠にこの時が続きますように」などと芝居めいた安っぽい言葉を呟きながら。まるで自分がオペラの主人公になった気持ちでいた。

「なにをしているんだ!ニナッハ!」
という声で目をあけるとそこにはピーボが立っていた。ピーボは嫉妬に苛まれ顔が怒りと苦しみで崩れていた。
ピーボは屋敷から消えたニナッハにまだつきまとっていたのだ。

彼はまじめにニナッハを愛していた。彼女のために美しいオペラセミセリアの準備まで進めていた。台本作家のゲラルディーニに無理を承知で、「泥棒かささぎ」という詩に脚色するのに、主人公の女性が父をおもうあまり銀食器を盗んだ。という過程を挿入してくれた依頼していた。
この出し物はアルジェンティーノとは直接関係なかったが、ロッシーニと親交も深めていた彼はそんなオペラをニナッハと一緒に見るというロマンチックな演出をしたデートを考えていたのだ。
主人公の名前がニナッハで、彼女といい仲になる恋人役の名前もピーボの予定だった。ニナッハのオペラ好きはよくしっていたので、出てくる主人公の名前が自分の名前だと知ると喜ぶだろうとおもったのだ。

そんなことまでしているのに・・・・!

ピーボの怒りはまずクラリネットの青年に向けられた。
青年はクラリネットで殴打され、それが折れるまでつづき、湖に蹴りとばされた。打撲で気を失いかけていた青年は動かない。
おれたクラリネットも湖に投げ捨ててから、ニナッハのほうに振り返った。恐ろしさと驚きのあまり震えているニナッハをしばし睨みつけたあと、満身の力を込めて彼女の頬を平手うちした。
ニナッハはひとたまりもなく湖にざぶんと落ち、濡れなずみになって泣いていた。

ピーボは一瞥もくれず立ち去った。
ニナッハはしばらく泣いていたが、やがてひどいめにあった愛しい青年を助け起こそうとしたが、本格的に気を失っているようで、動かない。

(クラリネットが折れたのは私のせいなんだ)
(私が悪いんだ)

前世の考察 6

<弱み>
幕があがると、待ちかねたようなヤジが飛んだ。
不満をしめす口笛の嵐、怒号、歌手や楽士たちへ罵詈雑言が乱れ飛んだ。
汚物まで飛び交うようになり、事態は最悪であった。
歌手たちも負けていない。口汚く観客をののしるという酷い皮切り日となった。

ニナッハは後方から投げつけられた汚物や怒号にまみれて恍惚として座っていた。
観客、役者、歌劇場にいる人間達の興奮のるつぼになっていたが、このオペラがすばらしいものだったことには間違いがなかった。
周りの興奮と、体で感じた恍惚感はニナッハに感動というスポットライトを浴びせていた。

ニナッハは庭の仕事をしていたサルディーニとよく無駄話をしていた。
彼はあの森の手入れをする人で良くあの場で顔をあわせていた。
彼は酒を与えていればいつもご機嫌だった。大きなはらをゆすって気持よく大きな声で笑う。そんな男だ。
ニナッハがある日いつも通りあの森の井戸のところで歌の練習をしていると、背後に気配をかんじ振り返るとサルディーニがおそろしいほど近くに立っていた。
ひどくおどろいて短く悲鳴をあげてから後ずさりした。
なにかにつまづき倒れそうになったニナッハの手を彼はとり、助け起こしながら言った。

「ニナッハ、実は相談があるのだが・・・」

サルディーニは自分の父が無実の罪で牢獄にはいってること。
そしてやっとそこから釈放されたが当座の暮らしができないほど逼迫しており、食べるにも困る状態であることを説明した。

父親を養うため、自分はここの銀食器を拝借しようとおもってる、なに旦那様のことだ、たくさんある銀食器の一つや二つ消えてもお怒りになるようなことはない。それに女中頭も言っていたが困ったことがあったらこの銀食器の一つ二つもっていっていいと旦那さまが誰かに言っているのを聞いたといっていた。と。

ニナッハはルクレツィアがぴかぴか光る銀の食器で肉を切っているところを思い浮かべた。ルクレツィアだけではなく彼女の弟、公爵、奥様もみんな食事でふんだんに銀食器を使っているところが目に浮かんだ。

でも彼がなぜそれを自分にいうのかわからなかったので、目をあげて怪訝そうに彼の顔を見た。
そのニナッハの心の動きをみたサルディーニは続ける。

俺は庭師で屋敷のなかに入れない。そこで一つ銀食器を拝借してきてくれないかー・・・。

ニナッハは善悪の区別が曖昧なところがあった。
少しくらい悪いことをしても悪いと思わない。むしろしてやったりと思った。
子どもの頃の粗野な環境がその程度の意識しか彼女にもたせなかった。
サルディーニとはさほど仲良くもなかったが、彼に頼まれ、そしてゲームのような感覚で盗んでやろうという好奇心がむくむく彼女の胸をふくらませてきた。
ニナッハはなぜか大笑いしながらわかったと気前よくサルディーニに約束した。

そしてその日の昼食時、盗みを決行した。
彼女がスカートの中にかくしたサルヴァを首尾よく手に入れ、あの井戸のところで上機嫌でへたくそな鼻歌を歌いながらエプロンで磨いていた。
大成功だった。
盗んだときの軽い興奮を思い出すと笑みがもれる・・・。
そして肩をたたかれた。
サルディーニかと思い振り向くと、なんとそこにピーボが立っていた。

彼は屋敷にきたときは、用事がおわると、その秘密の場所から少しはなれた木のところでいつも彼女の様子を観察していた。
いつも通り見に行ったが彼女があきらかに屋敷の銀食器を手にしているのをみて不審におもったのだ。

ニナッハは飛び上がるほど驚いて、銀食器を背の後ろに隠し後ずさりし逃げようとした。だがピーボはそれをとらえ彼女に顔をよせて聞いてきた。

「それは公爵の物ではないのか」

ニナッハはとっさに、父が実は無実の罪に・・・というサルディーニの・・・これも実は真っ赤な嘘で、ただサルディーニは飲み代欲しさにニナッハに盗みを働かせただけでニナッハはだまされていたのであるが、そのサルディーニから受けた説明をし、どうしても銀食器を盗まないといけなかったということを言った。
彼女はそれが自分の父であるという嘘をついた。

「父親のためにやむをえなく盗みを働いたというのか」

ピーボはニナッハの腕をつかんだまま、少し考えた。
狡猾なこの男はニナッハの弱みを二重にも三重にも利用しようと頭をフル回転させていた。
一通り考えがまとまったところでピーボは黄色の歯をむき出しにしてにやっと恐ろしい笑顔を浮かべニナッハにこの件は黙っておくからと言った。
ニナッハは銀食器を取り上げられ、ピーボは唇に人差し指をたてたままニナッハの口を片方の手でふさいだ。
ニナッハは気持ちが悪いとおもっていたピーボに手込めにされ、泣いた。

ことが終わり、ピーボは父を思う殊勝な気持ちに免じて見なかったことにするといって立ち去った。
盗みがピーボのような男にばれた。井戸端には涙で顔がぐちゃぐちゃになったニナッハだけがとり残された。


ニナッハは思う。
(私が失敗したから悪いのだ)
(私が女だからこんなめにあったのだ)
(私が悪いのだ)


どこからかあの序曲が聞こえてくる。ルクレツィアがふざけてチェンバロを弾いているのだろう。遠くて小さい音でしかもつっかえたり間違えたりの音。。。。
それが途切れなくニナッハの耳に入ってきた。

前世の考察 5

<その夜>
ロッシーニはもう時間がなかったので、前のオペラから序曲を転用することにした。
転用は彼の得意技だった。
そのオペラは彼の自信作であったのに台本がまずく失敗におわったものだった。
ロッシーニは大変忙しい男だったので、一からこの出し物用に全て書けるわけがなかった。
その作品から多く転用していたがそれも気にしない。
転用をきめた序曲も去年やったエリザベッタに転用していて2度目だったが気にしない。
彼は鷹揚な性格だった。

2月の半ばも過ぎた頃、アルマヴィーヴァ(セビリアの理髪師)が、初公演されることになった。
ニナッハはルクレツィアに付き添って初演を見に来た。
あらすじはルクレツィアから教えてもらってほぼ理解していた。恋愛がらみのどたばた喜劇でニナッハ好みの話だった。

わくわくし、顔を紅潮させ、幕があがるのをいまかいまかと待ちわびていた。
手前に楽士たちが座って音の調整を行っている。
一番前にすわっていた彼女であったので楽士たちの様子もよくわかった。
クラリネットの男はハンサムだった。ニナッハが何気なく彼を見ていると、音の調整がおわったその男がニナッハが見ているのに気がつき、ウインクをした。

ニナッハの心臓はもとからの興奮も手伝って最高潮になり震えるほどだった。
男はそんなニナッハから目をそらさず魅力的に微笑んでいる。
ニナッハも彼から目をそらせずにいた。そらそうとおもってもそらせないときがある。まさにそんな感じ。

開演の合図があり照明がおちた。
ニナッハは涙を流していた。なぜかわからなかったが感極まってのことかもしれない。極度の興奮状態にあった。


ジャジャーーーーーン
序曲がはじまった・・・・・。



この公演がきまっているセビリアの理髪師のあらすじは以下の通りである。
どたばた喜劇で、貴族も一般市民もやることはいっしょで特権階級の人間も大したことないんだよ~みたいな皮肉がこめられた内容である。


あらすじ
アルマヴィーヴァ伯爵 (リンドーロ)・・・主人公
バルトロ・・・ロジーナと無理矢理結婚しようとする。ロジーナの叔父
ロジーナ・・・アルマヴィーヴァが思いをよせる娘
フィガロ・・・アルマヴィーヴァとロジーナの仲立ちをするなんでも屋理髪師
バジリオ・・・ロジーナの音楽教師
ベルタ・・・バルトロ家の女中

第1幕 セビリアの街
セビリアの町の夜明け。医者のバルトロは彼女の姪ロジーナを後見して一緒に住んでいる。
彼は財産目当てもあるが彼女に心を寄せていて、結婚しようと思っている。
そのロジーナを見染めたのがアルマヴィーヴァ伯爵。
彼は思いのたけを彼女の家の前で歌う。
しかしバルトロを気にしてか彼女からの返事は無い。
そこへ町の人気者理髪師のフィガロがやってくる。
彼と旧知の間柄である伯爵はロジーナとのうまくいかせてもらうようにフィガロに頼む。
伯爵は再びロジーナの部屋に向かって、
「自分はリンドーロと言い、あなたのことを思っている」と歌う。
ロジーナは返事をするが、嫉妬深いバルトロが窓を閉めてしまう。フィガロと伯爵は彼女を落とすための計画を立てる。

場面変わって、バルトロの家。ロジーナはリンドーロに恋心を燃やしている。
ところがバルトロがこれに釘をさす。
ロジーナの音楽教師バジリオが町にやってきた伯爵がロジーナに目をつけていることをバルトロに伝える。
バルトロは一刻も早くロジーナと結婚してしまおうと公証人のところへ出かける。フィガロがでてきてロジーナにリンドーロのことを伝え、彼女からのラブレターを預かる。
バルトロが帰ってきて、ロジーナの挙動のおかしさを不審がる。
そこへ、泥酔した士官に変装した伯爵登場する。宿舎を提供する様にと暴れる。
ついでに、どさくさまぎれに、ロジーナにラブレターを渡す。
騒ぎを聞きつけてお手伝いのベルタを含めたみんなが出てくる。
さらには警備兵も登場して伯爵を逮捕しようとするが、伯爵はこっそり彼にだけ身分を明かし、警備兵一同はおどろいて最敬礼する。
何が起こったのかわからない他の人々で。混乱のうちに1幕終了。


第2幕 バルトロ家。
今度は音楽教師に変装した伯爵が出てくる。
バジリオが急病のため、代わりにロジーナの稽古に来たことを伝える。
不審がるバルトロに伯爵はリンドーロがロジーナを伯爵に売り渡す由を書いた手紙を渡し、用心するようにと言って不審を解く。
そこへ、ロジーナ登場。彼女は伯爵の変装を見抜き「リンドーロ様だ!」とよろこぶ。やがて、二人は歌のレッスンを始める。

ほどなくフィガロも登場する。
バルトロの髭を当たり、二人の恋人から注意をそらそうとする。
二人は今夜駆け落ちする計画を練る。
バジリオが急にでてきて、フィガロと伯爵はあわてる。
しかし、伯爵はバジリオに金を握らせ、追い返すことに成功する。
そうこうするうちにバルトロは伯爵の変装を見抜き、フィガロともども追い出す。

その後始末をしながらベルタは「年寄りが若い女を妻にするとこうなるのさ」と歌う。バルトロは先ほどの手紙を見せて、リンドーロがロジーナを伯爵に売ろうとしていることをロジーナに話す。
伯爵とリンドーロが同一人物であることを知らない彼女は、だまされたと悲嘆にくれる。バルトロとの結婚を承諾する。

真夜中フィガロと伯爵が忍び込んでくる。しかしロジーナは2人をなじる。
そこで、伯爵は自分の身分を明かし、二人は愛に再び燃え上がる。
急いでバルコニーから逃げようとするが、バルトロから頼まれて公証人を連れてきたバジリオがでてくる。
フィガロは機転を利かせて、伯爵とロジーナの結婚書類を作ってしまう。
バルトロは急いで帰ってくるが時すでに遅し。伯爵はロジーナの財産をすべてバルトロに譲ることで、彼もしぶしぶ承諾。一同大団円のうちに幕。 




ニナッハは夢のなかにいた。
序曲と一緒に、いつも歌の練習をするあの若葉色の森のなかで走り回っていた。
夜、こっそり屋敷をでて露にぬれた草の上で月あかりのなか歌う。
小さな精霊がたくさんでてきて、彼女の歌に聞き入る。

白いスカートをはいて葉っぱの上で踊ると光や露、精霊たちもおなじ動きをする。
一人でいるたのしさ
生きているよろこび
つつまれているあたたかみ
そういった夢のなかにいたのだった。



前世の考察 4

<チェザリーニ邸>
チェザリーニ邸の敷地内には小さな森があり、そこは大変きもちのいい場所だった。
株立ちの細く背の高い木が多く、冬の今は落葉しており、夏は美しい青葉を嫌みなく茂らせていた。
地面は枝や落葉して茶色くなった葉が一面に敷き詰められていて暖かみを添えている。

森の手前には品のいいガゼボやベンチがあり使用人達はそこで休憩してもいいことになっている。森の入り口はわかりにくい。だが小道があり円錐に手入れされたツゲ添道沿いにあり、放置された森ではないことがわかる。

その道を少し入ると池がある。池には東洋の美しい赤い魚が優雅に泳いでいる。そしてその広場を右におれると開けた場があり、木もそれまでよりも高い木が取り囲んでいる。外からは見えにくい場所になっていた。
その場には井戸があった。

とても古いもので、もう使われておらず土で穴を埋められており、10センチほどの深さの水がたまっていて、手をのばすと底をさわることができる。
冬にはいないが、夏はあめんぼが元気よくすべっていて水草も浮いている。

ここはニナッハのお気に入りの場所だった。彼女をつつんでくれる空間。そんな場で落ち着くのだった。
彼女はひまをみつけてここに来て、だれにも邪魔されずに歌の練習をしていた。
ニナッハの声は少ししゃがれた声が木立に反射し時折こだまする。それは御世辞にもうまいとは言えなかった。

だが彼女はかまわず自己流で練習をしていた。歌い終わるとその井戸にコインを投げ入れた。観客にはそこに代金を投げてもらうのだ。
彼女は歌手とお客の両方の役をこなし、歌い終わると拍手をしながらコインを投げているのだった。
いつか・・・・オペラの端役でもいいので出てみたかった。
彼女の声でそれは望むことは身の程知らずだったが、そんな夢を見ながら一人きりの時間を楽しんでいた。

チェザリーニ公爵はアルジェンティーノ歌劇場での、あたらしい出し物(オペラ)は、ロッシーニに決め、台本はわずか30年前に初演されたパイジェッロの「セビリアの理髪師」とすることに去年から決めていた。2月がくるというのにまだ肝心のロッシーニから曲が出されない。
公爵のいらいらは最高潮だった。ピーボはロッシーニのところに日参しまだかまだかとせっついていたが、のれんに腕押しぬかに釘で、もう公演が2週間前とせまっていた。

「だからいい加減なやつと仕事するのはいやなんだ!!!」
公爵がとつぜん大音声を発し椅子を蹴飛ばした。

ピーボはめずらしくおろおろして「まもなく仕上がると今朝はいってました。」
「ふんっ やつの間もなくは明日明後日1週間後だという意味だ!あてになるものか!!」

そこへピーボがロッシーニのところに張り付かせてせっつかせてた部下が入ってきた。
「できあがりました!!!!!」

おお・・・
その場にいた全員から安堵のため息がもれ緊迫した空気が緩んだ。
やっと曲ができた。さあこれからだなどと小さな声で談笑する気が早い者もいて、公爵が譜面をチェックする紙の音まじりに聞こえてきた。
チェックが終った公爵が部下にいぶかしげ見て、尋ねた。

「序曲は・・・・・?」

なんと序曲がの譜面がなかった。
大急ぎで部下がロッシーニのところに行き、また舞い戻ってきた・・・。

「・・・・。」
部下は非常に言いにくそうな表情で目を泳がせ言葉を取り繕おうとしているように見えた。
公爵はするどい視線を気の毒な部下に向けて開口一番の言葉を待っていた。
正直に言わないとただではすまない雰囲気であることはだれの目にも明らかであった。


「序曲を書くのを忘れてたそうです。」





前世の考察 3

<死>
ニナッハは街を彷徨していた。粗末な服に長いくろずんだエプロンはところどころやぶけており、体は傷ついていた。病気になっており熱もでていた。
もうろうとする意識のなかでは何も考えられず半開きの口からはがさがさの舌がでかけていた。喉が相当かわいているようだ。

ニナッハはぼうっとした視界の中で酒場を見つけた。
(ここにはサルディーニがいる・・・)
サルディーニというのは中年太りしたはげあたまの大男でおそろしく酒を飲む陽気な男だ。サルディーニとは知り合いだった。水がほしかった。酒場の扉を開いた。
サルディーニは入り口付近にすわっていた。彼はこのお店の用心棒のようなことをしながらただ酒にありついていた。酒焼けした頬と鼻で赤ら顔だ。

ニナッハが店を見回しているとサルディーニのほうが先に彼女を見つけた。彼は酒を今まで飲んでいたとは考えられないほどの素早さで立ち上がり、立てかけたあった悪漢を追い払うためのこん棒を手に取り、ニナッハに出て行けと叫んだ。
ニナッハはサルディーニと呼びかけようとしたその瞬間、鬼の形相で彼はニナッハをこん棒で殴りつけた。魔女はこの店から出て行け!そんなことを叫んでいたように思う。殴打は店の主人がとめるまで続いた。他の客はパフォーマンスとしておもしろがってみていたが、店の中で死なれては困ると思い主人はとめたのだ。

ニナッハは店の外に蹴りだされ、しばらく倒れたままの姿勢で動かなかった。
じりじり照りつける太陽が彼女の体から水分を奪って行く。
ニナッハはのろのろ立ち上がりテヴェレ川のほうに向かって歩いて行った。
テヴェレ川の河川敷におりると砂利の上にすわる。近くにはマルケッルス劇場があり今日はなにか出し物があるようで騒がしい音がする。

名前をよばれ方向をみた。学生だったフィリッポだ。彼はやさしい男だ。ニナッハはせいいっぱい魅力的に微笑んでお願いだから水を少しのませてくれと頼んでみた。そのとたん彼は橋の上で様子を見ていた友人たちのほうを振り返りどこかの異国語で叫んで両手をおおげさにひらいてみせた。友人達はおどろいてから、腹を抱えて笑いだした。フィリッポも同じように下品に顔をくずして大笑いしてからニナッハを見てつばを吐きかけ、汚い女は早く死ねというようなことをいって立ち去った。

ニナッハは汚れたテヴェレ川の水をみた。そして川の中にはいっていった。水のなかで体を浮かせる。漁村出身の彼女は泳げるのだ。体を浮かせて腐ったニオイのする水をすすった。近くの劇場でからニナッハが超絶的に愛してやまなかったあの序曲が聞こえてきた。実際にはイングランド女王エリザベッタをやっていたのであるが、ニナッハはセビリアの理髪師をやっているのだと思った。
しあわせだった。
その瞬間彼女は足を誰かにつかまれた。水の奥にひきずりこまれそうになる。とても強い力を感じた。ニナッハには抵抗する力は残っていなかった。序曲だけが彼女の耳に残りそのまま深くにごった水の中に引きこまれていった。

前世の考察 2

<最初>
時代は19世紀初頭、場所はローマ。
ニナッハは歌が好きな娘だった。赤茶の長い髪で器量よしだったというのは私の願望からかもしれない。少し影があるような表情をするのが人目を惹いた。なにか深く考えているからではない。それは生まれつきの顔立ちだった。彼女は利口ではなく教養もなかった。
ナポリから20キロほど南に下った漁村で生まれ都会にあこがれてローマにやってきた田舎娘であった。

ニナッハの奉公先はチェザリーニ公爵のお屋敷であり、仕事は雑務と公爵の娘の話し相手だった。彼女は公爵の娘ルクレツィアと年が近く、ルクレツィアのおつきで公爵が興行主をしている歌劇場アルジェンティーナに見に行くことが頻繁にできた。
パイジェッロやモーツァルトのいわゆるオペラブッファ(喜劇)が大好きで、ルクレツィアにせがんで、次はあれがみたいなどとぶしつけな懇願をし劇場で馬鹿笑いして、ルクレツィアに注意されることが常であった。

ある日いつものようにルクレツィアについてアルジェンティーナに行って笑っていたがふと思う。
(なんかのど自慢だよね。たかが歌がうまいからってさ、あんなもったいぶって歌うほどのものかな?後ろで演奏しているクラリネットの人とかいい音だしててイケメンじゃん。もっと前にでてきていいんじゃないの。。。。)

主役の男性のカスラートがさらにしたり顔で自慢の高音披露になるとさらに思う。
(女の役を男がやるってどうなん・・・。女が歌うほうが普通じゃないの?)
と、色々雑念がはいってきた。
(あああ~~~ 難しいこと考えるとダメだダメッ)と、その日は楽しむことができなかったのを悔やんだ。

屋敷に帰るといつもは忙しくほとんど姿をみせない公爵がいて、ワインを飲みながら青年と談笑をしていた。
広報の担当者であるピーポだった。
彼はなかなかの情報通で今はやりのオペラの情報に精通していた。ミラノ、ヴェネツィア,ナポリのそれまで彼には知らないことがなかった。
公爵も彼の情報を頼りにしており、観衆受けするオペラをいち早く他の劇場よりも先に上演しようとあるときは権力を使い、あるときは札束のはいった鞄を持ち歩き、東奔西走していた。

ニナッハはピーボが好きじゃなかった。
まだ若かったが背が低く、黄色い出っ歯で、なによりニネッハを見たときに笑うそのまなざしが蛇のようでありぞっとした。
だが彼は重鎮されていたのでしばしば屋敷にやってきてニナッハを気持の悪い表業で時折見つめていた。

「あのロッシーニという作曲家にカーニバル用の出し物を頼むのはどうか」
公爵は首をひねりながら続けた。
「ロッシーニは才能があり今飛ぶ鳥を落とす勢いのある作曲家ではあるのは認めるが、どうもいい加減なところがあるようだ。」

ロッシーニはやっつけ仕事が多く怠け者という評判がすでにたっていた。
ピーボはいった。

「彼は多少適当なところがありますが、独自のスタイルを持つ大変有望な若者です。本来、歌手だけを重視するオペラではなく、管弦楽に重きをおき、深みを持たせています。従来のオペラ・セリア(正歌劇)の流れをかえる男だと評判です。」

「セリアよりブッファに力をいれていると聞いたが・・・.パイジェッロやドイツオペラの信者からは非難されているし。彼に依頼するとアルジェンティーノのロッシーニ色が強くなってしまう。問題はないだろうか・・・。」

ニナッハはドアのそとでおかわりのワインのトレイを持ってたっていた。あまりに熱心に盗み聞きしていたせいでひっくり返しそうになった。
(ロッシーニって知っている。ナポリで数ヶ月暮らした時に評判を聞いたことがあった。なんでもすっごいイケメンとかいう噂・・・)

(バイオリンとかクラリネットが活躍するんだ!うざい歌手もそんなに目立たなくなるオペラが見れるんだ!)

ニナッハの心は浮き上がりもう話だけで震えるほど大興奮していた。
(ロッシーニのオペラをぜひ見に行きたい!絶対に!!)


前世の考察 1

私は自分の前世にさほどの興味を持っていない。

前世を知りたくなるほどの過去からの背負ってきたものが今の自分の生活に支障をきたしてはいないと思うからだ。2,3年前は興味があった。子どもの受験で過度に失敗や間違いに反応し、「怒り」の感情をコントロールするのが困難であったからである。それでヒプノセラピーも受けたこともあった。


スピリチュアルに興味を持つ以前から、見覚え、聞き覚えのあるものが2つある。おそらく私の前世と深くかかわりがあろうかと考えてるもので一つは、ジョキアーノロッシーニの「セビリアの理髪師」の序曲。もう一つはトレンツリャドの絵画「カネットの階段」「デステの回廊」である。


序曲については小学生の頃に初めて聞いた。車にのって京都に行くときに、ラジオから流れてきたのだ。このサビあたりのところで、自分が暗い劇場に行きこのオペラブッファに心酔していた様子が突如目の前に現れた。数年後、この曲がセビリアの理髪師というオペラの序曲であることを知る。


2つ目は私が西洋絵画に興味を持ち始めた頃、光と影のコントラストが美しいリャドの絵画を知ってから作品を見た時のこと。



カネットの階段・・・この階段をあがっていけばなにがあるのだろうとわくわくしながら上った自分の胸の高鳴りを思い出した。




デステの回廊は、誰か恋人とこの場でデートしてかくれんぼのようなことをしてふざけあった記憶が・・・・あるような気がするのだ。私はそのときが最高に幸福で体中でしあわせを味わっていた・・・・ようにおもう、


この序曲、絵画、そして私がヒプノセラビーのときに見た中東かアジアのハーレムはそれぞれ違う前世だろう。今回はこの序曲についての前世を見てみたいとおもった。


前世の見方など、やり方も考えたことがなかったが、天使やハイヤーセルフに方法を聞いてみた。

・音楽を毎日聞いて心の動きを第三の眼で見る。

・天使に導いてもらい思い出すのを手伝ってもらう。(直感するのを助けてもらう)

・瞑想はハートの奥に入るような方法でする。


これらによって様々な情報を得ることができたので、私が知りたいとおもったその前世を物語のように備忘記録しようとおもう。